ガングリフォンアライドストライクデブリーフィングルーム

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 ガングリフォンというゲームの世界設定が偏執的な作り込みであったことに、誰も異論を挟む余地はあるまい。

 設定資料集『ガングリフォンコンプリートファイル』を紐解くと、不必要に詳細なHIGH-MACSの開発経緯や、不必要に詳細な第三次世界大戦の戦況推移であるとか、不必要に詳細なAWGSの特性解説などが載っている。それらはゲームのあちこちに鏤められ反映されて、「リアルっぽさ」を強固なものとし、プレイヤーに感情移入させ没入感を高める役割も果たし、更には設定自体が人を引き付けるほど高い完成度を誇っていた。

 けれども、アライドストライクの設定は、当初から予想されていたとは言え、しかしあまりにも酷いものである。

要点

  • てんで噛み合わない任務と戦闘
    • 状況設定を無視したミッションに興醒め。
  • そして全ては「なかったこと」に
    • 今までの設定は台無しになった。
    • 第501機動対戦車中隊が登場せず『ガングリフォン』である意義はない。

てんで噛み合わない任務と戦闘

 ミッションの頁で既に触れた通り、ブリーフィングで説明される任務の内容、及びそこから推測される戦争全体の状況と、ゲーム中実際に行われる戦闘の様子は、恐ろしいまでにちぐはぐである。

 頂点を窮めるのが最終面ミッション13である。ブリーフィングによれば、残存勢力を旧市街に追いつめたらしいが、始まってみれば明らかに敵兵力の方が味方を上回っている。ものの数分と経たぬ内に無能な友軍は全滅、1人取り残されたプレイヤーの目の前を敵HIGH-MACSが我が物顔で跋扈し、しかも増援が四方八方から続々と襲いかかってくる。何のことはない、包囲されているのはプレイヤー側だったわけである。

 ブリーフィングで嘘の情報を流すことは、多少であればゲームに意外性を与え緊張感へと繋がるかも知れないが、アライドストライクにそういった意図は感じられず、ミッションを設計する際に状況設定は無視されただけだと考えるのが自然である。こうも出鱈目だと興醒めするしかない。

そして全ては「なかったこと」に

 2000年、アメリカ主導のグローバリゼーションが頂点を極めると同時に、反アメリカを標榜する勢力が、グローバリゼーションの否定という形で台頭し始めた。

 2008年、食糧危機を引き金に経済恐慌が世界を襲い、それまで微妙なバランスで保っていた国同士の連帯に小さな亀裂が走った。一部の大国が国連を脱退したのである。これらの一連の騒動は、小さな経済圏の乱立を引き起こし、新たな覇権争いの火種となっていった。
 アジアもまた例外ではなかった。南アジアを中心に経済圏が組まれ、国連に対抗するかのように軍拡への道に進んでいったのだ。
 そのころ、日本はアメリカの後押しを受けて、常任理事国入りを果たしていた。増大するアジアの脅威に対処するべく、アメリカが安全保障の拡大要求を可能にする口実を作るためにだ。日本は「対立するアジア」のパワーゲームに、否応なく引き込まれていったのである。

 2023年、長期軍事政権のアジアの一国に民主化革命が勃発した。南アジア経済圏はそれをテロリストと断定。治安維持活動と称して、軍事政府に軍事的支援を展開した。その裏側に隠された目的は、親米派を打ち倒し、傀儡政権樹立である。この間接的な介入に対して、アメリカも直接行動に出ることはできない。国連を主体としたPKF投入で、民主化陣営の援助を間接的に行なう立場を取ったのである。

 そして2024年。日本を中心としたPKF活動が、しかしその実態はアメリカ支援による多国籍軍の投入が正式に決定。国連から軍事的介入を要請された。

 ――アジアを二分する戦争が始まったのだ。

:マニュアルから全文転載

 アライドストライクのストーリーとしてマニュアルに掲載されている文章である。どこからどう読んでも第三次世界大戦が起こったようには思えない(そう思える方がいたら是非ともBBSに解釈を書き込んで戴きたい)。

 これが別のゲームであったならば文句は言わない。だが、ガングリフォンには既に素晴らしい状況設定が存在していた筈である。それを全て台無しにしてこんな設定を見せられたところで、はっきり言って評価のしようがないのである。
 ガングリフォンブレイズの設定も酷かった。確かに酷かったけれども、以前の作品を「なかったこと」にするような真似はしていなかった。その点でアライドストライクはブレイズ以下だと言えよう。

 そして何よりも、タイトルに「ガングリフォン」と冠しておきながら、第501機動対戦車中隊「ガングリフォン」が設定にまるで登場しないことに対して、悲しみと憤りを禁じ得ない。

 つまり、ゲーム性のみならず設定面から見ても、アライドストライクが「ガングリフォン」である意義はどこにもなかったわけである。

参考

だそく[蛇足](名) 〔文〕〔本体を台なしにするような〕よけいなもの。「―をくわえる・―ながら」

:三省堂国語事典第五版から引用、赤字強調は引用者

土橋■世界設定に関して、一部手直しを加えているんですよ。辛口な近未来感定が持ち味のシリーズですけど、さすがに8年前の設定だと現実味との“ずれ”がある。ただでさえキナ臭い世界情勢なので、それを踏まえてのリニューアルですね。今後10年はシリーズを続けたい気持ちがあるので、それに耐えうる骨組みに。日本外人部隊といった特異な部分は引き継いでいますよ。

:ドリマガ2004年7月9・23日合併号から原文通り引用

 好意的に解釈すれば、土橋氏が思うような設定は何らかの事情で採用されなかったということになるか…。

余談

 マニュアル40ページを見ると、「前大戦」という単語が使われており、アライドストライクの世界でも第3次世界大戦は存在した可能性もある。単にそこまで考えていないだけだろうが…。

 マニュアルの裏表紙には世界設定が英文で表記されている(日本語の文章はこれを訳したものと推察される)のだが、それによれば、グローバリゼーションを主導していたのは国連だそうである(USAという単語は出てこない)。白人には微妙に変更された設定を宛ったか。

 E3の頃に発表された「プレイヤーは対戦車部隊に所属する反乱兵で、最重要任務は、地球を破壊し敵対するあらゆる生物を殲滅してきた究極の兵器であるarmored tanksを撃破することである」とのストーリーはどこへ消えたのだろうか。いや消えてくれた方が良かったから不都合はないのだが。

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